バイタルサイン・リハビリ時のリスク管理について本気出して考えてみた②
今回は血圧についてです。
https://matome.naver.jp/m/odai/2143254055438690301
アンダーソンの基準土肥の変法は上記を参照下さいね。
血圧に関しては収縮期200mmHg以上、拡張期120mmHg以上は運動を控える。安静時より収縮期40mmHg以上、拡張期20mmHg以上の上昇時中止するとなっています。
前回もお話ししましたが、アンダーソンの基準は基本的に心疾患患者様が対象の基準です。
なので、この血圧高値は心負荷が高くなるという解釈なんだと思います。心筋梗塞でも弁膜症でも心負荷ぎ上がれば心不全になっちゃいますからね。
一方で私が、臨床で重要視しているのは平均血圧と拡張期血圧です。
収縮期を疎かにしてるわけではありませんが、脳血流量を規定するのは平均血圧ですし、運動を行えるレベルの方に短時間の血圧上昇があったところで心不全になるとは考えにくいからです。
平均血圧は今、述べたように脳血流量を規定するほか、内臓器血流の指標にもなります。拡張期血圧は高ければ末梢血管抵抗高値(末梢血管の動脈硬化)を示唆して運動時の血圧上昇や起立性低血圧を事前に予測出来ますし、拡張期血圧の低下は冠血流量の低下を招きます。
リハビリ開始時に色々なリスクを予測出来ます。
あと、運動後の血圧測定に関してですが、運動すれば、血圧が上がるのが当たり前です。学生さんにありがちですが、運動後、血圧測定し「運動前とそれほど変わりなかったので大丈夫です」はむしろ大丈夫では無いです。上がらないのは異常です。健常者は運動終了後3〜5分経てば平常血圧・心拍に戻ります。高齢者や心疾患があれば、平常血圧に戻るのに時間がかかるようにならます。血圧が変わっていないのであれば測るのに時間がかかりすぎているのでしょう。血圧が上がらない方は、運動に対して十分応答出来ていないと解釈する事も出来ます。薬を飲んでいればその限りではないですが。
次は体温について考えてみます。
※もじゃ様からご指摘を頂いております。詳細はコメント欄をご参照ください。
バイタルサイン・リハビリ時のリスク管理について本気出して考えてみた①
ガイドラインをそってリスク管理をしていれば最低限、とがめられる事は無いでしょう。
しかし、学校で覚えて来た知識と臨床に出てから得た知識と、考えはあまりに解離していると、感じています。
リハビリの清書に記載されている管理を覚える事は当然必要ですが、それだけでは私臨床は務まりませんでした。
何故、その数値だといけないのか、ホントに動かしてはいけないのか本気出して考えてみた結果をお話ししてみます。
一般的にバイタルサインというと、脈拍・呼吸・血圧・体温・意識になるかと思います。
先ずは、脈拍と血圧から考えてみます。
理学療法士が国家試験を受けるときには誰もがアンダーソンの基準を暗記します。
このアンダーソンの基準で脈拍に関しては、安静時120回/分、運動時140回/分以上の場合には運動を行わないもしくは中止するとなっています。その他の清書でもこれにならっているもしくは安静時の30%以上の脈拍増加があれば一時中止するとしたものが多いです。
では、なぜ120回/分では運動を行わない方が良いのでしょうか?
私が、安静時に脈拍120回/分だったと仮定してみましょう。明らかになにかが身体のなかで起きていますね。緊張してるか、炎症反応や自律神経系の異常で交感神経活性が高まっているなでしょう。
1つはこれらの理由、病気を持つ患者様とすれば何かしらの炎症反応が起きていると思われます。基本的に炎症期(CRP:3以上)となれば、筋の蛋白合成は起こりません。筋トレはまず適応になりませんね。
もう一つは、心拍出量が低下し、血圧を保てなくなるからだと思います。血圧=心拍出量(心拍数×1回拍出量)×末梢血管抵抗なので、単純に心拍数が上がれば血圧は上がるはずです。しかし心拍数が140〜150回/分を越えると1回拍出量がガクッと下がり結果的に血圧が低下してしまいます。
安静時に120回/分という事は運動時の脈拍上昇の予備能が少ないというこですね。
これまでの事を逆に考えると、心拍数上昇の原因が分かっており、血圧が保てていればアンダーソンの基準や清書の基準に限ったことではないのかなと考えています。そもそもアンダーソンの基準は心疾患の方専用の基準ですしね。
実際、私はこの限りではなくリハビリ介入しています。逆に心拍数で言えばゆっくりな方が怖いですね。50回台/分の方とかDMに伴う自律神経障害とかで、心拍応答の悪い方も要注意だと思います。
こんな感じでバイタルサインの意義や目的を考えていこうと思います。
長くなってしまったので、血圧は次号としますね。
脊髄損傷の予後予測について①
脊髄損傷の機能予後については探せば比較的データは見つかりやすいと思います。
ただ、データは古いものが多く現行のリハ体制では充分活用できな物も多いと感じます。
急性期における予後予測をざっくり言うと、
完全麻痺では
1,受傷時よりも一年後1髄節までは改善することがほとんど。
2,AIS:A→B〜C10-15%、AIS:A→D5%
3,急性期MRI T2強調画像にて1椎体以上の信号変化のある症例は機能予後が不良であることが多い。
不全麻痺では
1,受傷72時間時点で改良フランケル分類Bであれば半数以上が改良フランケル分類CorDへ改善する。改良フランケル分類Bの中でもB3(痛覚残存症例)は機能予後良好者が多い。
2,受傷72時間時点で改良フランケル分類Cであれば半数以上が改良フランケル分類D(歩行可能)へ改善する。
歩行獲得に絞ればかなり正確な予測が可能です。
Fig:1認定理学療法士講習会資料より
Fig:2認定理学療法士講習会資料より
Fig:2はFig:1のグラフ部分だけを切り取りました。
これはL3とS1の筋力と触覚から一年後の歩行獲得率を予測する式になります。
比較的簡単に評価でき、私自身重宝しています。
ざっくりとですが、急性期における予後予測について触れてみました。
ざっくりじゃなく、ちゃんと教えてくれ!データの出元が知りたいなどのコメント頂ければと答えいたします。
地方病院における脊髄損傷者の目標設定について②
前回の続きになりますが、私自身が訪問リハを経験したり、生活期で活躍する先生方とお話しさせて頂いて感じた事ですが、脊損リハが中途半端な状態で在宅へ戻らざるを得ない方が多いということです。これは、疾患別リハビリテーション開始に伴いリハビリ期間が短縮してしまった事が原因だと思われます。
何とか移乗が出来るが、危なっかしくてとても自立とはいえない方や練習は頑張ったが達成出来なかった方などです。
しかし、介助者である家族や本人から聞かれる意見は、移乗よりもTVのリモコン操作や鼻をかむ、新聞を読みたいと言った事やそのちょこちょこした介助が手間になってしまうという事でした。
実際に在宅で生活している方々の意見を聞いてみると受傷早期に正確な予後を予測する事で、介入の方向性が大きく変わって来そうですね。
次回は、脊髄損傷の予後予測についてお話しせてみます。
地方病院における脊髄損傷者の目標設定について①
こんにちは(^^)
今日は私の住む地域における脊髄損傷者の目標設定について考えてみます。
今回は頸損者や高位胸損者のAIS:AorBの方についてです。
AIS:AorBとは、完全麻痺or運動完全麻痺ですね。
Fig:1 認定理学療法士講習会資料より
Fig:1は脊髄損傷の勉強をしているとよく出会うデータです。
これに従えばC6B2が床移乗を除いて自立の可能性が高くADLに関しても自立可能となります。学生の時にもそう習ったのを覚えています。
しかし!Fig:1をそのまま目標にしてしまうのは安易です。
このデータが取られたのは20年以上前の事です。その当時、現在の疾患別リハビリテーションはなく、リハ期限も今ほど厳しくなかったようです。現在だと、脊髄損傷は脳血管リハに該当するので180日の制限があります。
Fig:1の動作を獲得するには2〜4年の月日が必要です。つまり急性期→回復期リハビリでは獲得が困難という事になります。
脊損センターや国リハなどでは、この期限を超えてリハビリテーションを提供することが出来ますが、これに該当しない地域では目標設定を熟考しなければなりません。
幸い、私の地域は所沢の国リハが転院圏内なので、若く動作を獲得可能と思われる方は転院依頼をしていますが、年齢や併存疾患などによっては転院を諦めその方に合わせた目標を考えなくてはならない事の方が多いです。
次号で、生活期を経験してみて感じた急性期からの目標設定についてお話ししてみます。
心筋梗塞の患者様にヒマラヤに行きたいといわれて④
ヒマラヤに行く際の問題は他にも、食事や睡眠・薬など、たくさん気になる所がありましたが、これまでの情報でいきなり行くのはリスクが高いなぁーと判断したので、スイスのアルプスへの旅行を提案させてもらいました。
その理由は、当然ヒマラヤに負けない景観(行ったことはないですが笑)、そして標高が3000m以下で観光が可能な事です。また、登山列車を使えば約3000mの高地まで列車で行く事も可能な事が分かりました(^^)
もちろん主治医には相談をして、外来心リハを継続し平地での運動耐用能を評価・強化してからとなりました。
ちにみに国内の3000m級登山では最低1泊必要になり長期のアプローチが必要になるので更に注意が必要になります。
この患者様は、「生きてる内にやりたいことをやっておかないと後悔する!やったもん勝ちだ!」とよく言っていました。
ヒトの生理学を考えれば、身体負荷が大きくリスクもありますが、人間ですからその方の生き方を尊重した指導が出来るようにこれからも頑張って行きたいと思います。
心筋梗塞の患者様にヒマラヤに行きたいと言われて③
さて、後は気圧についてですが基本的には低気圧に伴う酸素分圧の低下と血圧上昇が問題だという事が分かりました。これについては前回と前々回の記事でお話しさせて頂きました。ので、気圧関連で飛行機について。
飛行機内の気圧は基本的に0.8気圧に保たれているそうです。この0.8気圧というのは海抜2300m、富士山五合目に相当します。やはり、低気圧ですので上記の通りの心配が残りますね。長時間のフライトの際には注意が必要になります。
そして、調べていると薬についても注意が必要だという事が分かりました!これについては知り合いの薬剤師に調べてもらいましたが、1番気をつけなければならないのは利尿剤だそうです!
前回の記事では、脱水について触れました。それが更に助長されてしまうわけですから要注意になりますね。
これらの情報をまとめて私は、患者様にこう伝えました。
続きは次号で。